鬼の霍乱

30歳くらいの頃。

中小病院で働いていた。

土曜日の外来は12時半まで。

基本的に、土曜日はオペをやらない。

技師の出勤も3人。

午前中だけなので、スタッフも平日より少ない。

そんな土曜日の午前中だった。

救急で、股関節頸部骨折の患者さんが搬送されてきた。

🚑

そして突然、

「道具あるから、今からやるぞ!」

副院長の鶴の一声で、急遽オペが決まった。

当時、技師の中では一番若かった俺。

当然のように招集された。

こうして、予定にはなかったオペ室へ。

ただ、その日は朝から少し体が怠かった。

でも、

「昨日、友達と飲んだからな」

いつもの二日酔いだと思っていた。

そしてオペが始まった。

しばらくすると、副院長から突然、

「お前、ちょっと今日変だぞ!」

「えっ?」

「動きが悪いっ!代われ!」

「……え?」

俺としては、ちゃんとやっているつもりだった。

「いや、ちゃんとやるよ。俺の動きの何が悪いの?」

そう思った。

でも、先輩とチェンジ。

俺はオペ室から退場。

まるでサッカーの試合途中、

「お前、今日はもう下がれ!」

と言われてベンチに戻される選手。

その日の俺は、まさにそれだった。

外来が終わると、休憩室で横になった。

その日は土曜日の12時半から月曜日の朝8時までオンコール当番。

日曜日は待機出勤だった。

寝ていると、

「……なんか指、痒いな」

手の指をポリポリ。

「足の指も痒いな」

またポリポリ。

すると、皮膚がポロポロ剥がれてきた。

「なんだこれ?」

この時は、まだ分からなかった。

熱もあった。

それでも俺は、

「昨日飲んだから、二日酔いだろ」

くらいに思っていた。

後から分かった。

俺が二日酔いだと思っていたもの。

それは、

手足口病だった。

副院長には、俺がいつもと違って見えていたらしい。

流石よく観てるなぁと感心した。

俺自身は、最後まで二日酔いだと思っていた。

まさか手足口病で、オペ室から途中交代させられるとは思わなかった。

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新卒技師、毎日二日酔い

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